スーツが安い 投げ売りが始まってます

4月7日に緊急事態宣言を受け、百貨店やショッピングモールなどで食品売り場以外の休業が都市部で始まり、緊急事態宣言エリアが広がり全国になった4月17日以降はその動きが全国に広がりました。最終的に4月のデータは未だ出ていませんが、売り上げは壊滅的になっていることが明らかです。そのため、投げ売りが始まっています。紳士服・スーツにフォーカスして見てみます。

生産のスケジュール

洋服はざっくりと、原料の綿を糸にして織物や編み物を製造し、裁断・縫製をして製品になります。製造工程だけでも時間がかかります。機械的に製造すれば良いわけではなく、トレンドを考えながら色柄デザインを吹き込む必要もあります。

具体的には2020年の秋冬物については、2020年の3月頃には完了しています。ただ、この商品が計画通りに生産されているのかは大いに疑問です。現実を考えると計画通りには、ありえません。もっとも、先の話よりも目先の事が重要です。春物は早いところでは1月頃から店頭に並び始めますが、実需で一番動くのは3月4月です。

海外生産

1990年には半数以上だった国内生産は、現在数%あるかないかまで減少しています。紳士服・特にスーツに関しての生産国は以前までは中国が圧倒的の多かったのですが、現在ではオーダーや小ロットのものなどに限られています。

何故、劇的に減ったか?の答えは簡単です。価格が合わなくなってきたから。織物や編み物のテキスタイル部門の生産で、中国はまだまだあるのは、縫製に比べると生産設備の規模が大きいからです。ミシンとプレス機と縫う人があれば成り立つ縫製業は人件費の割合が大きく、中国人の人件費が上がることで成り立たなくなりました。

現在、縫製している主力の国は、一極集中ではなく東南アジア各国に分散しています。ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・ミャンマー・カンボジア・スリランカ・フィリピン・マレーシアなどです。

2020年の春節

2020年の春節は1月25日でした。今年の場合だと1月19日くらいから、1月いっぱいが休みです。新型コロナウイルスが無くても、毎年この時期は中国全土企業活動の動きは止まります。春節は中国だけでは無く、ベトナム・マレーシア・インドネシアにも時期は前後しますが存在しています。

春物主力商品が原産国を出荷されるのは、この春節の時期の前後になります。新型コロナウイルスの影響が出てきたのもこの時期でした。その為に、春物から計画通りに商品は日本に入ってきていませんでした。春節が絡む国からの商品の納期が大きく遅れたり、入ってこなかったりしていたのです。

積み上がる在庫

春物の売り上げは、前代未聞の悪い状態なので、平時なら大問題になる納期遅れや未納に関して全くといって良いほど問題になりませんでした。

これからの生産なら、止めたりキャンセルしたりという事も考えます。しかし、工場を既に出荷されていて港に留まっていた商品や、既に生産完了している商品に関しては修正も難しい。しかし、商品が納品されても、新型コロナウイルスの影響で店舗がまともに開いていない状況や消費マインドでは動かない在庫になることは目に見えています。緊急事態宣言の出る前にはこんなチラシが出ました。

ECへのシフト

緊急事態宣言が出ると、店頭に呼び込むことが一層困難になりました。今後は以前にも増してネット販売に注力していかざるを得ません。まだまだこれからですが、投げ売りは既に始まっています。価値のないものが安くなっているのでは無く、見かけの定価から大幅値引き!ということでは無く、本当にイイ物が安くなっています。

はるやま 大処分セール

5/5-7,590円に値下がりしてます
古いダブルスーツのデザインでは無く、トレンドのデザインです。縦横に伸びるストレッチ素材を使用してエレガントなデザインは新しく、とてもこんな価格には見えません。

5/5-12,900円に値下がりしてます
こちらもバリバリのトレンド、全方向にストレッチするニット素材は清涼感もたっぷり。さらに2パンツでこの価格は驚異的です。

5/5-9,900円に値下がりしてます
こちらも新しい。大阪府立大学名誉教授医学博士監修の健康科学を標榜する燃焼系ビジネスウェア「スラテクノシリーズ」です。こんな価格で出すとは・・・。

P.S.FA緊急セール

最新の商品ではなく、在庫処分の可能性大ですが今風のシルエットに防しわ性があり、パンツは洗えるなど価格から考えれば大幅に安いです。

きちんとしたフォーマルは、腐る物ではありませんから・・・この価格は思い切りましたね。オールシーズン着用できて、洗えるパンツ仕様。ウエスト調節のアジャスターも付いています。

バッタ屋さんにも、既に商品が流れている様です。

洋服倉庫

5/10-プレミアム会員価格のみ値下がりしてます+クーポン出てます
柔らかく軽量で通気性と速乾性抜群の「クールマックス」を使用する涼しげなスーツ、新しいです。本来販売する予定の1/3くらいになってます。

ソロテックスを使った、上着もパンツも丸洗い出来る仕様で2パンツスーツです。これも新しいです。やっぱり本来の設定価格よりも半額以下に大きく安くなってます。

5/10-クーポン出てます
「Ermenegildo Zegna」も安くなっています。世界のセレブを虜にする上質なスーパーファインウールを使っていて、身体に馴染む上質な柔らかさは、一度着たら解ります。本来は10万円前後の販売価格だったはずです。

コロナが晴れたら

今は、当たり前だった日常が失われています。出勤することさえ、ままなりません。メリハリの無くなった日々から脱却したら、気分を一新してパリッと動く時のツールが、実は今が最適の買い時です。一日も早くこの事態が収束します様に。

解りにくいと言われる、洋服業界流通の裏側をお話しします

衣食住の三要素の一つである衣料業界の苦戦が続いています。何故その状況を招いてしまったのか?それは洋服の製造流通の時代の推移から見えてきます。普段はあまり語られる事の無い、洋服業界の裏側を考察します。

アパレルメーカーはボロ儲けしている ?

2019年の2月に、今は完全に手を引いてしまいましたがZOZOTOWNの前澤前社長が洋服業界の裏側を暴露する様相で アパレルメーカーはボロ儲けしている トーンの発表をしていました。筆者は業界に携わって30年になりますが、この内容を読んで「コイツ、まるで解ってないな」と呆れました。その後、内容を削除したり謝罪したりということはありましたが、この先長くないことは確信しました。

洋服の製造にかかる時間-糸-

自販機で買う様に、欲しい時にボタンを押したらいつでも出てくるなら、前澤前社長の言い分も解るのですが、実態は違います。紳士服・婦人服・子供服を問わず、その商品の価値を決める、大きな存在は素材・生地です。その織物・編み物を形作るのは糸であり、その糸には原料が存在しています。どんな原料を使うのか?何と組み合わせるのか?だけでもその組み合わせは無限大です。さらにその糸を、どんな太さでどんな撚り方をするのか?も組み合わせは無限大。さらにその無限大同士をどう組み合わせるのか?今、お召しになっている洋服も、織物になる前にだけで、途方もない組み合わせの中から選ばれた組み合わせなんです。

洋服の製造にかかる時間-織物・編み物-

ジャガードや編み物・プリントなどは置いといて、経糸とヨコ糸を組み合わせる純粋に織物としての織り方というのは、実は大きく分けると3種類しかありません。平織り・綾織り・朱子織です。ただ、綾織り一つ見ても経糸を一本飛ばして二本潜らせるのか?二本飛ばして二本潜らせるのか?など組み合わせは無限にあり、他の織りとの組み合わせもありますから、組み合わせは無限大です。さらに、どんな糸を使うかによって全く違う結果になります。風合いと呼ばれるタッチの善し悪しは原料と織りから醸し出される結果です。見た目に関しては色が重要です。どんな色に染めた糸を、どう組み合わせるのか?色柄は当然重要なファクターになります。

洋服の製造は時間が掛かる

洋服の製造にかかる時間-縫製-

洋服は生ものです。売れる為の商品をアパレルは必死で企画します。一口に企画と言いますが、今売れている商品ではなく、数ヶ月先、一年先に店頭に出て売れる商品でなくてはいけません。そのためにデザイナーは日夜感覚を磨き、その世界観に魂を込めて仕事をします。そのデザイナーの感性に響くテキスタイル(織物や編み物)をテキスタイルメーカーは膨大な組み合わせから作り上げて提案したり、時にはデザイナーのイメージを具現化します。そこから重要になってくるのがパタンナーです。

パタンナーは、デザイナーの世界観を具体的に洋服にする仕事です。パーツをバラバラに設計し、縫い合わせた時に、この素材ならばどんなシルエットになるか?という三次元の権化のような仕事をします。どれだけ素晴らしい才能を持つデザイナーも、その世界観を余すところなく具体的な洋服で表現できるパタンナーが無くては、絶対に仕事は完結しません。優秀なデザイナーは例外なく優秀なパタンナーをパートナーとして大切にしています。パタンナーの地位が日本では、相対的に著しく低い事が筆者は不思議でなりません。

パタンナーが引いたパターンを元に、サイズ別に調整したグレーディングという作業が行われ、付属と呼ばれるボタンや裏地・芯地などが選定されます。

膨大な資料と経験からブランド全体を組み立てる

次にMD(マーチャンダイザー)が登場します。洋服を店舗に並べるためには在庫が必要です。在庫以上の売り上げは絶対に出来ません。かといって在庫過剰になっては会社の継続は出来ません。半年から一年先の流行を先読みし、今の自社である売り場において、どれくらいの数量が売れるか?いくらなら売れるのか?という商品にするための全般的な組み立てが行われます。価格的な制約からデザイナーの世界観とコストを擦り合わせて具体的な商品にする為に調整を行います。社内での合議を経て必要量の素材・付属がそれぞれの業者に発注されます。

生地の生産には最も時間がかかり、 一般的には2ヶ月から3ヶ月ほどの時間を有します。縫製で1ヶ月から2ヶ月かかりますが、順番待ちや途中でトラブルが発生した場合はもう少しかかります。仕上がった商品を検品して店頭に配送するまでの約半年以上からの時間を生産部門が管理します。縫製工場は自社の場合もありますが、協力工場という名前の長い付き合いのある会社が 大半はです。縫うキャパシティーを押さえたり、細かい縫製の指示や付属の手配など指図書を切って管理するのも生産部門の大切な仕事です。

時間短縮のために

本当は途中いくつもの試作があったり、もっと手間が掛かっています。大幅に省略しましたが、概要はこんな感じです。たくさんの人たちと時間が洋服には必要なことがご理解いただけましたでしょうか?時代の流れがだんだん速くなってくると、それに対応するための策が生まれてきます。物理的な時間を短縮する事はもちろんやりますが限界がある。一番掛かる素材生産時間を減らせば、GOしてから店舗に並ぶまでが大幅に短縮できる。そこで幅を効かせたのがテキスタイルコンバーターです。

流行を先読みし、アパレルが欲する素材を必要とする時に、必要な量を既に仕上げて在庫で持っているのがテキスタイルコンバーターです。在庫を持っていれば即出荷が可能で、数ヶ月の時間が一気に短縮できます。商品の価格(この場合生地値)は需要と供給の関係で決まりますから、ニーズのある商品を在庫で持っていれば高く売れる。リスクがあるところには利益があるわけです。糸を製造する紡績も同様の理由で自社リスクの糸を、こぞって揃えました。

時間短縮から失うもの

画一化・同一化への一歩

色々なショップが並ぶモールで買い物を楽しんでいた時に、あれ?この生地使った洋服って別の店でも見たよな?って経験ありませんか?その理由というのが上記で述べたテキスタイルコンバーターの仕事が効いてるワケです。

時間というリスクをギリギリまで避けられる手法は、一旦味をしめたら元には戻れません。流行に敏感なブランドアパレルから、その比率は増えていきました。売れてナンボですから。テキスタイルコンバーターへの依存が増加すれば、一定数は売れ筋の名の下に原反在庫から選ばざる得なくなります。たとえ意図した物とは多少違っていても、多少高くなっても。テキスタイルコンバーターは全てのニーズに応えるべく幅広い在庫を持つよりも効率よく絞って売れ筋に仕立てます。これがアパレルが自分の首を絞める画一化・同一化への第一歩だったのです。

あくまでこれは第一歩です。ココまでの話、実は20世紀までの話だったんです。消費者の多様化する好みと売り場の変化(郊外店の出現や大型ショッピングモールの台頭など)で、在庫を持つことが非効率になってきて(リスクした商品が思った値で売れない)紡績もテキスタイルコンバーターも在庫が縮小していきます。

1990年の衝撃

国内で製造された生地素材を、国内の縫製工場で縫製する事が、 1990年代初頭までは一般的でした。もちろんインポート素材を輸入して国内で縫製することもありました。どちらにしても生産の軸足は国内だったのです。洋服はまだ、比較的高価な商品でした。(スーツとウール織物の歴史を語る:安いだけじゃ無い!本当に賢いスーツの購入方法もご覧下さい)

1990年初頭に衝撃が訪れます。店舗の大型化を模索していたイオン(当時のジャスコ)が子会社を通じて海外縫製に本格的に着手します。業界内では大根を売っている隣でスーツが売れるか?などの嘲笑する声が少なからずありましたが、店舗の大型化に伴って増える売り場面積を埋めるツールとして白羽の矢を立てたのです。

イオンの子会社は、韓国と香港に日本から生地を送り込み縫製・検品を行って、日本に輸入するスキームを確立し、創業祭の目玉として紳士上下のスーツ1万円を実現したのです。今でこそ驚く価格ではありませんが、当時の感覚から言ったら半額以下どころの騒ぎではありません。

日本の「おもてなし」

総合商社のパワー

工賃の安さから海外縫製が一般的に広がるのに、時間はかかりませんでした。一時的に北朝鮮もありましたが、やがて中国に集約されていきます。(今は、中国での縫製は大幅に減っています。国の発展とともに工賃も高くなって、ベトナムやカンボジア・インドネシアなどに移っています)国内の工場と違って、言葉の通じない未知の場所で縫製するというのは、アパレルの生産部が簡単にできる話ではありません。そこで総合商社の出番です。

総合商社は「おもてなし」を遺憾なく発揮します。縫製のキャパシティは私どもで押さえてあります。工賃は国内工場では実現できない、こんなに安い価格です。付属品も私どもで手配します。細かい原価計算も管理も必要ありません。すべて私どもでやらせていただきますので、仕上がった商品を仕入れて頂くだけでOKです。

甘いささやきに、次々とアパレルは凋落されていきました。会社としては面倒くさい部分を丸投げ出来るので、生産管理の人間の頭数がいらなくなったのです。少ない人数で商社との窓口としての仕事だけする人が居れば良いわけです。

生地素材の現地中国での生産が軌道にのってくると、日本から輸入するよりも安いですよ。だけでなく、我々の考える来年の売れ筋はコレです!と完成品を提案する様になります。

アパレルは更に面倒くさい部分から解放されます。デザイナーもパタンナーもいらない。試作もいらない。リサーチも商社がやってくれる。完成品の中から選んで仕入れ価格交渉をして数量と納期を伝えるだけで店頭に商品が並ぶ様になります。

そして誰も居なくなった

一部を除いて、「ものづくり」の解る・出来る人間は現在のアパレルからは大半が居なくなってしまいました。現役のデザイナーと呼ばれる方の具体的な仕事を聞いてみると・・・商社の提案してきた完成品の中から商品を選び、裏地を変更したり、レディースならリボンを変更したりという話を聞いて愕然としますが現実です。

かくして同じような商品が別のブランドでも並ぶという現状が出現します。同一化した売り場は個性という魅力が大きく欠けてきて、消費者はつまらないと思い始めます。売れなくなってくると販売価格を下げて、利率を稼ぐことを商社に要望するようになります。商社は限られたコスト制約の中で提案することになります。ますます商品として、つまらなくなることは自明の理でしょう。

そして誰も居なくなった

アパレルの存在意義

現在のアパレル苦戦が単なる不況や消費税値上げなどの外的な要因だけだはない事がご理解いただけたかと思います。ではアパレルの存在意義は無いのか?ということにならないのが面白いところでして。自社の売り場を持っているところは別にして、売り場を持っていない小売店に販売しているアパレルは一口に言ってショックアブソーバーです。

一昔前までは、海外で生産された商品を検品したり、納期まで保管する倉庫業務を担っていました。昨今では検品は体制が整ってきた現地で済ませる方がコストが安いし、輸入された商品が倉庫に保管されずに各店に配送される事が多くなってきました。小売店にしてみれば、前述した様に商社に直接頼めば商品は合理的に「ものづくり」を知らなくても仕入れられるワケです。それでもアパレルを完全に切れないのには理由があります。

商社は基本的に在庫を持ってはくれません。仕上がった商品は全量引き取ることが条件です。小売店が直接引き取った商品は自社ですべて販売する必要があります。そんなこと、当たり前でしょ?って思いますよね。ところが対アパレルだと、そうでもナイのです。昨今は 優越的地位の濫用・下請法 などが厳しくなり、繁忙期などに無料で駆り出される販売人員としてのアパレルは筆者の知る限り無くなりました。取引において約束もルールもちゃんと存在します。が、しかし・・それはそれ。アパレルよりも小売店の方が立場的には強いという歴然とした関係があるのも確かなんです。(詳細は紳士服業界の構造と不況もご覧下さい)

小売店は自分のところの在庫(商社で発注した商品)を優先的に売る必要がありますから、売れ行きに齟齬が生じてくると調整弁としての機能をアパレルに求めます。あれやこれやの理由をつけて、引き取らなかったり返品したりです。アパレルは理不尽だと思っても、今後の取引を考慮してメリットがあると思えば飲むわけです。

オフプライスストアとは?

オフプライスストアという言葉をお聞きになったことありますか?アメリカ発の形態で、ブランド品を安く売る店舗です。それならアウトレットモールが既にあるじゃん!と思いますよね?ざっくりした違いは、アウトレットモールは客がわざわざ目的を持って郊外に行き、ブランドごとになっているショップを散策ショッピングする形態。オフプライスストアは、複数のブランドが一つの店に並んでいて、生活圏にあり普段から気軽に立ち寄れる形態という違いです。2020年3月にドンキホーテが愛知県大口町にオープンしました。神戸本社のアパレルワールドは数年前から自社ブランド中心に展開を始めました。ゲームを扱うゲオなども参入を計画しているようです。

ワールドは自社ブランドを中心に展開している様ですが、他の2社に関しては海外ブランドが中心と思われます。洋服が構造不況と長く言われる中での新規参入はどんな意味があるのでしょうか?それは、ブランドは解りやすいからです。言い方を変えると、どうせ一般消費者は見る目なんてナイから記号化した商品が安いなら買うだろう、という思惑です。

賢い買い物

その手の商品が大好きという方も沢山いらっしゃるでしょうし、否定する気持ちも毛頭ありません。でも本当に賢い消費者は本質的に上質で割安に購入出来る事を望む方も多いでしょう。そのような商品は上述した様な、アパレルからの処分品を狙うのが一番だと思います。もちろん商品自体には何の問題もありません。

そんな商品ばかりを集めて販売しているのが名古屋市にある洋服倉庫です。ブランドネームは外されている事も多いですが、生地ブランド中心にブランド商品も販売しています。

洋服業界の変化というマイナーな話題ですが、読んでいただいた皆さんの賢い買い物の一助になれば幸いです。

安いだけじゃ無い!本当に賢いスーツの購入方法

安いスーツは長持ちしない?は本当か?

最近は不況の影響もあって、洋服の価格が全般的に安くなっています。安い洋服を使い捨て感覚のワンシーズンで廃棄していく買い方が主流になっているといってもイイでしょう。ただ、紳士物のスーツに関してはワンシーズンで使い捨てというわけにはなかなかいかないですよね。安いスーツだと直ぐに「くたびれちゃう!」という声もよく聞きます。イイ物を買った方が長く着られるという声も聞きます。本当にお得なスーツは何かを考察してみます。

イイ物って何だろう?

洋服というのは型番があるモノと違って、普通の方にはその価値がわかりにくい代表選手だと思います。この商品が本当にイイ物なのか?自分に似合っているのか?洋服業界に携わって数十年になりますが、業界に足を突っ込むまでは洋服の購入というのはその都度不安があったことを覚えています。個人的にはイイ物を長く着用するという方が結局お得だと思いますし、それを推奨したいとも思っています。でもイイ物と一口に言っても判断するのは難しいですよね。金額をたっぷり出せばイイ物が買えるのは、ある意味事実です。スーツ一着に数十万円をポンと出せる人は、こんな文章を読む必要は全く無いです。

イイ物はくたびれないという声

イイ物はくたびれないという声は否定もしませんが肯定もしません。どちらのケースも実はあるからです。この文章を書こうと思ったのも、先日あるコラムを読んだからです。中傷する様な気持ちは全く無いですし、誤解を生んでもイヤなので詳細は書きませんが、素材のイイ物を選ぶ方が長く使えて結局お得で、素材の良さは生地ブランドを選べば大丈夫という内容だった思います。そうなんです!素材は大事なんです!スーツの善し悪しには当然、縫製も深く関わってきますが、今回は焦点を絞って素材について歴史をおさらいしながら考えていきましょう。

ガチャマンの時代

「ガチャマン」という言葉を知っている方は少ないでしょう。経済年表を見るとガチャマン景気という言葉がちゃんと出てきます。1950年から始まった朝鮮戦争の特需、いわゆる朝鮮特需というものです。今からではとても想像も付きませんが、1951年の法人税上位には繊維関連の会社が多く名を連ねました。「ガチャマン」というのは、織機がガチャンといったら、万の金が儲かるというトコロから来ています。朝鮮特需でトヨタ自動車が息を吹き返すことが出来たのは有名な話ですが、実はその特需の大きな部分の数字が繊維製品だったことはあまり語られることはありません。軍服だけでなく、テントだとか軍用の毛布・土嚢用麻袋などでした。

1950年代に生産された織機

尾州産地とは?

紳士服の重衣料に用いられる素材と女性用の重衣料に用いられる素材は本来違います。ここ10年くらいで価値観も随分変わり、その差は少なくなってきていますが。婦人服はドレープと呼ばれる柔らかく、しなやかな落ち感が大切です。それに対して紳士服は張りのあるビシッとした感じがあることが基本です。紳士服素材、特にウール素材に関しては尾州産地が有名です。愛知県の名古屋市の北側に位置する一宮市や尾西市(現在は一宮市に合併しています)津島市など、その界隈一帯を尾州産地と呼びます。この産地の特徴は世界の同様の産地と違い、分業化されているトコロにあります。綿から糸にする会社・糸を撚る(撚糸と呼ばれる糸を捻る加工です)会社・糸を染める会社・そこまでの作業を纏めて織機を使って織物にする会社・折り上がった織物を検品する会社・最終的に整理(織物をお化粧したり加工したり、白糸で織られた織物を染色したりする仕上げ工程です)会社という風に別々の会社が特徴を生かしながら、一つの織物を生み出すわけです。たくさんの会社が一つの織物を仕上げる尾州タイプと、海外(主に当時はイタリア・英国など)によくある一社で完結するタイプでは、それぞれメリットとデメリットがあります。

尾州産地の強み

尾州産地の一つの織物には、たくさんの会社が携わる事は上記で説明したとおりですが、実際はもうちょっと複雑です。たとえば、織る作業をする機屋(はたや)と呼ばれれる会社は全部自社で織るワケではありません。子機(こばた)と呼ばれる外部の会社に作業を委託するなど、それぞれがさらに細分化されています。つまり組み合わせは無限大にあるのです。もちろん、それぞれの機屋さんに得手不得手がありますし、メインで使う組み合わせは存在しています。それでも、こういうモノを生産するなら糸はコレ・染めるのはココ・織るのはココで、仕上げはココだ!ということが出来るのが尾州産地の強みです。この強みと円が安かったこともあって世界の市場で重宝されました。ただ、1970年代まではウールは贅沢品だったんです。

当時のスーツ価格

一張羅という言葉も、死語になっていますね。1970年代くらいまでのスーツは高価だったんです。どれくらい高価だったかの指標としてよく言われたのは、給料の一ヶ月分という価格です。現在の価格に換算すると、20万円というところでしょうか。一張羅の意味を辞書で調べると、「一枚しかなくて、着たきりで脱ぎ代えられない着物」とあります。 おいそれと買える代物では無かったんですね。その頃にスーツといえば基本的にオーダースーツのことで、既製服はちょっと安い「つるし」と呼ばれる卑下のニュアンスを含んだトーンでした。当然それだけの値段がとれるのですから、当時の織物は贅沢な原料を使用して、たっぷりと時間をかけて丁寧に高密度で織り上げることが出来たワケです。デザイナーや業界関係者達が、当時のモノを珍重して古着を探すのは、そんな理由があります。

スーツをどこで買うか?

1970年代にスーツを買うのはテーラーか百貨店と相場が決まっていました。その潮目が変わってきたのは1980年代になってからです。従来の百貨店とは違う売り方をする丸井などの台頭と、そこで扱われるDCブランド(デザイナー&キャラクターブランド)。また洋服の青山コナカなどの郊外店です。 両カテゴリーともブームと呼べる躍進を遂げたのは「つるし」だったのです。その頃から卑下の意味での「つるし」という言葉は急激に無くなっていきました。個人の所有するスーツの着数が増えていったのもこの頃からです。「一張羅」も耳にしなくなっていきます。郊外店の扱う39,800円とか49,800円のスーツは価格破壊という言葉を伴って飛ぶ様に売れます。高価だったスーツが5万円前後で買える様になったのはこの頃です。

高級インポート素材ブランド

ウールの存在感

素材の話に戻します。前述した様に紳士服のために作られる織物は、目付(織物の重さ)のついたガッチリしたものがあくまで主流でした。きちんとしたスーツであれば、ほぼ例外なくウール100%ないしはそれに近い混率が普通でした。春と冬で分けることをしない、出来ない一張羅の時代は、それで済んでいましたが、攻勢をかける「つるし」軍団は価格で物量を裁くために夏は夏用のスーツ(春夏スーツ)を当たり前にしました。平織りと呼ばれる一番肉が薄い織物のことをトロビカルと言います。1980年代までは婦人服でウール100%のトロピカルは存在しましたが、紳士服でトロピカルと言えばポリエステルとウールを組み合わせた(ウール45%に対してポリエステル55%が主流)モノのことを指していました。ガッチリ感がウールでは出せないと考えられていたからです。婦人服で使われていたウール100%のトロピカルを大幅に高密度にしたウールトロピカルが紳士服に使われる様になったのは1980年代からです。シーズンを通じてスーツの中心混率がウール100%になりました。

ウールの良さ

ウールの良さの一番は、なんと言っても素材が生きているということです。は!??何じゃそれ!??って思ういますよね。解りやすく言いますと、ウール自体が呼吸するということと、素材自体にシワの回復力があるということです。夏場にポリエステルのスーツを着た経験がある方ならお解りかと思いますが、ウールのスーツに比べて暑いです。間違いなく。また、上質なウールを使っているスーツなら、一日着た後でスーツにきちんとかけておけばシワが回復するんです。ポリエステルには出来ない芸当なんですよ。ポリエステルはシワになりにくいをセールスポイントにしてるモノもありますが、むしろ一度シワになったら取れないのがポリエステル原料の織物なんです。何故そうなるか?という事に関して書くなら・・それだけで一本書けそうですが、一口にいってクリンプという、毛が本来持っている縮れが効いているんです。

ウールのデメリット

いいことずくめの様なウール素材なんですが、デメリットもあります。天然繊維だからこそ物理的には決して強くはありません。前述のウールトロピカル素材なら手で引き裂くことは出来ますが、同様のポリエステル素材なら、かなり難しいです。(余談ですが熱に強いのはウールなんですけどね。燃えないわけではありませんが、燃えにくい特性があります。ポリエステルは簡単に溶けます。たばこの火をうっかり落としたら、ウールなら直ぐ払いのければ大丈夫であっても、ポリエステルなら確実に痕が残ります)毎日着用し続けるのも避けた方がイイです。一日着たら最低でも一日は休ませる。ブラッシングをしてハンガーにきちんと吊すなど保守が必要です。

19,800円だと問題ないのに1,980円だと問題になること

良い素材のスーツが長く着られるか?イイ物はくたびれないか?という疑問に対し冒頭で、否定も肯定もしませんと書いたのは扱いによるところが大きいからです。乱暴な言い方ですが、おしなべて高価で上質な良い素材の方が本質的には弱いです。物理的に弱いというだけでなく、虫対策も重要です。上質な良い原料のウールは虫にとっても大好物なんです。筆者も以前に分不相応と言われる様なイタリア産高級カシミヤスーツを購入しましたが、一年経って颯爽とタンスから取り出したら・・・腰から崩れ落ちたことがありました。

実際にあるアパレルであった話ですが、百貨店を中心に19,800円という高級スラックスをそれなりの数量販売していました。お客様からのクレームも一切ありませんでした。モデルチェンジに伴いサイズ不揃いになった在庫品を近所の人向けにファミリーセールで1,980円で販売しました。アパレルの認識では商品自体に全く問題はなく、お客さんも喜んで購入されて即完売だったそうです。ところが!・・・しばらく経ってからクレームの嵐になりました。安かったから仕方ないのかもしれないけれど、すぐ駄目になったじゃないか!

取り扱いと保守が大切

クレームを受けても、最初は事情が飲み込めませんでした。販売数量でいったら、今まで全くクレーム無く百貨店で販売してきたのに比較して僅かな数量なのに・・・何故これほどまでに??買ったお客様達の声を丁寧に聞くと直ぐに事情が飲み込めました。上質な素材を使用したスラックスは1,980円の扱いしか受けていなかったからです。聞けば、毎日自転車を漕いで通勤に使ったり、驚くのは鉄棒したり・・・。

ウール素材の原料価格

ウールの原料である羊毛価格は相場があって変動します。相場には為替も関係してきますから一概には言えませんが、1990年代の初め頃が一番安かったと思います。世界中でウールを着る需要が増えたり、気候変動や干ばつの影響もあって、現在の羊毛の価格は安かったときの3倍から4倍以上になっています。スーツ離れや不況の影響もあり、店頭販売価格が上げられない紳士の重衣料売り場から、以前に比べてウールの比率が急激に下がったのは価格という理由があります。同様の理由で現在販売するウール素材の多くの質が下がっていることも間違いありません。これは世界的な傾向でインポート素材と呼ばれる海外のブランド素材も例外で無い事が多いです。

先日、ちょっと事情があるインポート素材のスーツを物流倉庫で見る機会がありました。事情があると言っても、商品自体には何の問題も無く、会社の資金を含めた事情に問題がある、数年前に生産された商品なんです。この商品の出来が素晴らしい!現在出回っている商品よりも、明らかに上質さは上です。イイ原料を使っているんだなぁ~ってプロなら誰でも一目で理解出来ます。ところが更に驚いたのは、その転売価格の安さなんです。

紳士服業界の構造と不況

紳士服に限らず、営業活動をする者にとっては数字がついて回ります。予算を会社に報告し、それに対して仕事を組み立てます。洋服業界が少々特殊なことは書き出したらキリがありませんが、その一つに発注から納品までに時間が掛かる事が上げられます。次のシーズンの予算を出すのに、昨年対比の数字がマイナスだと上司はまず聞き入れてくれません。現場をよく知る担当者としては、この売り場でこのタイプが今シーズン1,000着売れたけど、昨今の状況を勘案すればおそらく同タイプの商品は売れても800着だろうなと考えたとします。そのまま出しても予算は通過しないので、あれこれと理由をつけて増加は難しいですが昨年並みに頑張ります!と報告することになります。

そうして組まれた予算を達成するために頑張るワケですが、実際に商品が無ければ絶対に予算は達成出来ないわけで、販売する半年以上も前に1,100着の発注を業者にすることになります。契約ですから何も問題は無いのですが・・・発注を受けた方はイロイロと考えるところがあります。洋服業界では依然として売る方と買う方の力関係が存在しているからです

商品の売れ行きが悪かった場合、あれこれ理由をつけて引き取ってもらえない事は実際にあります。長い目で見てどちらが得か考えるわけです。そこで、1,100着の発注が来たけれど・・・あの売り場で今の状況を考えると売れても800着ではないのか?売れない300着を最終的に押しつけられるのではないか??と考えるわけです。しかし、万が一先方の思惑通りに売れてしまった場合は大きな責任問題に発展します。保険をかけて900着の生産にかかるわけです。

シーズンが始まってみると・・・実際に売れたのは700着という結果になりました。やっぱり残った商品は引き取ってもらえません。言うがままに生産しているよりも被害は抑えられましたが、200着の商品は経費をかけて長期間眠らせておいても良いことは何もありません。そこで現金化することになります。生産業者は自分のところで販売するルートを殆ど持っていませんし、ブランドの管理ということもありますので、信用できる専門業者に転売することになります。売れた700着は生産原価や経費の足し算で販売していますが、その中の経費にこの手の経費も含んでいますから、転売時には足し算の価格で販売しなくても済む様になっていますし、そうでないと転売できません。それ故に転売価格は生産原価を大きく下回る価格になることがあるのです。

わかるかなぁ・・・

今年の商品と昨年以前の商品の見分けが付くか?

なんだ・・・古い商品だから安いって事か!と納得するのはちょっと早いです。実際は業界内には鮮度という考え方がありますから、鮮度の高い商品(生産されてから時間が経過していない)ほど転売価格も高価になりますから、生産業者の判断で本来売る店舗と時間差が無い事も大いにあります。また、よっぽど個性のある商品ならハナシは別ですが、定番的なビジネススーツの変化があるといっても素人筋に判断付けることは困難です。10年以上も前の商品なら解ることもあるでしょうが、そんな商品は実際には保管経費が掛かりすぎるので出回りません。ラペル(襟の形)とかシルエットの事は一旦忘れて、上着のボタンが2つでパンツのタックが無しかワンタックの商品を選んでおけば間違いありません。

どこで売ってるのか?その1

選び方は解ったけど・・・その手の美味しい商品はどこで買えるのか?そうなんです。解りやすく表示してあったらイイんですが、普通に売りたい商品が売れなくなるので店舗ではそんな売り方はまずしません。今、全国展開する紳士服チェーン店では店舗閉鎖が相次いでいます。初心者にオススメなのはこの手の商品を狙うことです。といっても普通にお店に行っても買うことは出来ません。閉鎖によって浮いた在庫の処分方法として福袋があります。実際の店頭ではお正月にやっていますが、ネット上では正月に限らず期間限定でやることが多いです。あるモールの売れ筋ランキングです。

スーツの価格だと思えない価格で販売していますよね・・・。福袋というのは何が入っているか解らない。販売する側からみれば、在庫処分だからです。その価格で販売するために見合う原価で生産した商品は一着もありませんから、消費者にとっては非常にお得なワケです。何が来るか解らないと言っても、赤や黄色のスーツが来ることはまず無いでしょう。前述の2ボタンのビジネススーツなら無難な商品が届く可能性が大半です。だから購入者のレビューも悪くないです。当然です。(お持ちのポイントの都合によって購入するモールは変わるの理解出来ますが、今のオススメはYahoo!ショッピングです。(よろしかったら、 撤廃ではない!楽天市場の送料無料問題 もご覧いただけたら幸いです)

どこで売ってるのか?その2

福袋は不安だし、好みもあるしなぁ~・・・・という方には、その手の商品を売っているお店を探す方法があります。紳士服の素材を供給する一大産地として尾州産地があることを説明しました。紳士服生産アパレルも、その界隈に集中するのは必然です。尾州にほど近く商業地である名古屋市には指折りの紳士服アパレルが何社も存在します。その手の業者もその界隈にあるワケでして

名古屋市 紳士服 スーツ 激安

のキーワードで検索してみてください。
その手の商品を扱う会社が出てきます。

名古屋市に気軽に行けるエリアの方でしたら、お店に行ってみてください。そうでは無い方も通販を全国に行っている会社もあります。ここで出てくる会社が販売している商品は、通常の足し算で構築された商品は逆に無いと思われます。この手の美味しい商品が選び放題ということになります。

賢いスーツとの付き合い方

最近多く出回っているポリエステル100%やレーヨン混のスーツを決して否定しません。新しいトレンドもありますし、若い方には全然ありかと思います。ただ年齢を重ねて立場のある方達には上質な原料のスーツを着ていただいた方が良いと思います。混率の目安としてはウール100%かウール50%ポリエステル50%までですかね。それを上記の買い方で激安で購入した商品を、値段ありきの扱い方を決してしないでキチンとメンテして愛でること。これが実践できれば、従来かかっていたコストより遙かに低価格で豊かなビジネススーツライフがお楽しみになれますよ。