「格安SIM」という言葉を聞いたことが無い方は少ないと思いますが、何となく月額料金が安く利用できるスマホプランという捉え方をしているケースが多いと言えます。
先日見たネット記事で、格安SIMの満足度について記述されたものがありました。実際に格安SIMを利用しているユーザーは、極めて満足度が高いというものでした。その記事の中で満足度が高い筆頭は「楽天モバイル」だったのですが・・・なんで?筆者は楽天モバイルを格安SIMとして扱っているのかなぁ?と疑問が湧きました。
格安SIMには、確かに明確な定義は存在していないと言えます。しかし、月額料金が安いという尺度だけで仕分けするのも難しいと言えます。格安SIMの括りにはなっていないスマホプランでも月額1,000円を下回る価格設定をしているものがありますし、格安SIMでも4,000円から5,000円を超過するスマホプランも存在しています。
楽天モバイルは格安SIMなのか?改めて考えて解説していきます。
通信事業者には2種類がある
スマホプランを提供している事業者には、「MNO」「MVNO」の2種類があります。
「MNO」とは?
MNOとは、移動体通信事業者(Mobile Network Operator)の頭文字であり、国から特定の周波数帯(電波)を利用する認可を受けて、事業者自らが回線やアンテナ基地局の建設を行い、スマホプランを提供している事業者のことを指します。
限られた電波は国民の共有財産であり、国の認可を受けることは容易ではなく、決められた期日までに全国にサービスを提供するなどの条件も多く、莫大な資本力が必要です。そのため、国から認可を得ているMNOは、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの4社しかありません。
国から認可を受けている周波数帯(電波)
具体的に、国(総務省)から認可を受けている周波数帯を見てみましょう。
4Gの周波数帯
バンド | 周波数帯 | 使用するキャリア |
1 | 2GHz帯 | docomo・au・SoftBank |
3 | 1.7GHz帯 | docomo・au・SoftBank・楽天モバイル |
8 | 900MHz帯 | SoftBank |
11 | 1.5GHz帯 | au・SoftBank |
18 | 800MHz帯 | au |
19 | 800MHz帯 | docomo |
21 | 1.5GHz帯 | docomo |
26 | 800MHz帯 | au |
28 | 700MHz帯 | アジア太平洋共通バンド(docomo・au・SoftBank)楽天モバイル |
41 | 2.5GHz帯 | Wireless City Planning・UQ コミュニケーションズ |
42 | 3.5GHz帯 | docomo・au・SoftBank |
5Gの周波数帯
「sub6」
バンド | 周波数 | 使用するキャリア |
n77 | 3.7~3.8GHz | au |
n77 | 3.8~3.9GHz | 楽天モバイル |
n77 | 3.9~4.0GHz | SoftBank |
n77 | 4.0~4.1GHz | au |
n78 | 3.3~3.8GHz | docomo(3.6~3.7GHz)・au |
n79 | 4.5~4.6GHz | docomo |
「ミリ波」
バンド | 周波数 | 使用するキャリア |
n257 | 27.00GHz~27.40GHz | 楽天モバイル |
n257 | 27.40GHz~27.80GHz | docomo |
n257 | 27.80GHz~28.20GHz | au |
n257 | 29.10GHz~29.50GHz | SoftBank |
「MVNO」とは?
(出典:総務省)
MVNOとは、移動体通信事業者(Mobile Network Operator)の頭文字であり、国からの電波利用認証を受けておらず、MNOからネットワークの一部を借り受けることで、スマホプランを提供している通信事業者のことです。
MVNOは自社で回線やアンテナ基地局などに資本投下の必要が無いため、安価にスマホプランを提供することができます。MNOに比べて参入は遙かにしやすいため、1,890社がMVNOのビジネスを行っています。
月額料金の安さではなく「MVNO」を格安SIMが自然
月額料金が安いという尺度よりも、自社で設備を有していない「MVNO」を格安SIMとして、自社で設備を有して認可を受けている通信キャリア「MNO」と明確に区別する方が自然です。
通信キャリア「MNO」と、主な格安SIM「MVNO」は以下の通りです。
通信キャリア「MNO」 | 格安SIM「MVNO」 | |
ドコモ | ドコモ | IIJmio NUROモバイル mineo BB.exciteモバイル HISモバイル LIBMO ロケットモバイル など |
ahamo | ||
KDDI | au | |
povo | ||
UQモバイル | ||
ソフトバンク | ソフトバンク | |
LINEMO | ||
ワイモバイル | ||
楽天モバイル | 楽天モバイル |
この仕分けでは、楽天モバイル「最強プラン」は通信キャリア「MNO」であり、格安SIMではないと明確に言えます。
通信キャリア(MNO)と格安SIM(MVNO)の違いと共通点
通信キャリアと格安SIMの違うところ、同じところについて検証しましょう。
格安SIMが利用できるのはMNOの回線の一部
通信キャリア(MNO)では当然回線の全部を使って運営されていますが、格安SIM(MVNO)では回線の一部を借り受けて運営されている違いがあります。
通信速度は格安SIMが相対的に遅くなる
格安SIMでは使える回線の帯域が狭いので、通信キャリア(MNO)と比べると格安SIMの方が通信速度は遅くなる傾向になります。
利用者が通信速度を計測している「みんなのネット回線速度」で、MNOと格安SIMの直近3ヶ月の通信速度の平均値データ比較してみましょう。
回線 | Ping | 下り | 上り |
通信キャリア | 45.0ms | 117.5Mbps | 19.1Mbps |
格安SIM | 49.9ms | 78.8Mbps | 13.3Mbps |
*Pingは反応速度で数値が小さいほどレスポンスが良い
*下り上りは通信速度で数値が大きいほど速い
インターネットを快適に利用するには、下り(ダウンロード速度)が重要です。
一般的なインターネット利用には、10Mbpsから20Mbps程度があればOKです。高画質の動画視聴をする場合でも50Mbps程度の通信速度が出ていれば問題はありませんから、格安SIMでも一般的な利用では問題が無いと言えます。
多くの利用時に問題の無い格安SIMですが、お昼休みの時間帯などユーザーが集中する場合は、使える回線が全部と一部に限定されていることが、顕著に通信速度に反映されて低下するケースがあります。
格安SIMの利用ができる電波やアンテナ基地局はMNOと同じ
格安SIMは「繋がりにくいのでは?」という誤解をお持ちの方もいらっしゃいますが、自社で設備を持たずに借りている格安SIMで使う電波やアンテナ基地局は、通信キャリア(MNO)と全く同じです。
格安SIMでは必ず通信キャリア(MNO)のどこかの回線の一部を借り受けているので、たとえばドコモの回線を借りている格安SIMでは、ドコモが繋がる場所では格安SIMも繋がりますし、ドコモが繋がらない場所では格安SIMも繋がりません。
繋がりやすさに関しては、通信キャリア(MNO)も格安SIMも同じです。
なぜ?楽天モバイルは「格安SIM」と認識されることがあるのか?
通信キャリア(MNO)と格安SIMには明快な違いがあるので、自社で国の認可を取って施設整備を進めて自社回線を持つ楽天モバイルを格安SIMの扱いをするのは、ある意味失礼だと言えます。
ではなぜ?楽天モバイルは格安SIM扱いをされるケースが多いのでしょうか?
他の通信キャリアと比較して破格の安さだから
(出典:楽天モバイル)
4社ある通信キャリア(MNO)のうちで、先行している3社は3大キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)と呼ばれることが多く、大きなシェアを持っています。後発だった楽天モバイルは3大キャリアの顧客を奪わなければ経営が成り立たず、横並びの料金になっている3大キャリアよりも格段のコスパの良さを提示する必要性があります。
通信キャリア4社の無制限プラン料金を比較
通常の通信速度が利用できる無制限プランは格安SIMには無く、通信キャリア(MNO)4社で提供されている無制限プランを比較すれば、楽天モバイルの安さが際立ちます。
ドコモ | au | ソフトバンク | 楽天モバイル | |
プラン | ドコモMAX | 使い放題MAX+ 5G/4Gプラン | メリハリ無制限+プラン | Rakuten最強プラン |
容量 | 3GB~無制限 | 1GB~無制限 | 2GB~無制限 | 20GB~無制限 |
基本月額料金 | 8,448円 | 7,788円 | 7,425円 | 3,278円 |
国内電話通話も無制限に無料
(出典:楽天モバイル)
3大キャリアも楽天モバイルも、国内電話通話は30秒で22円になっています。
しかし、楽天モバイルではRakuten Linkのアプリで通話を行えば、オプション料金無料で国内通話が利用できます。
ドコモ | au | ソフトバンク | 楽天モバイル | |
プラン | ドコモMAX | 使い放題MAX+ 5G/4Gプラン | メリハリ無制限+プラン | Rakuten最強プラン |
容量 | 3GB~無制限 | 1GB~無制限 | 2GB~無制限 | 20GB~無制限 |
基本月額料金 | 8,448円 | 7,788円 | 7,425円 | 3,278円 |
かけ放題料金 | 1,980円 880円(5分まで何度でも) |
1,980円 880円(5分まで何度でも) |
1,980円 880円(5分まで何度でも) |
Rakuten link利用で無料 |
3大キャリアでは国内電話かけ放題オプションは月額1,980円で、オプション料金と基本料金を合わせると軽く9,000円を超えますが、楽天モバイルのRakuten Linkのアプリを利用すれば月額3,278円で済みます。
楽天モバイルの料金は、他の通信キャリア(MNO)と比較してあまりに安いため、それとは別枠の格安SIMのくくりに入れられてしまう要素があると言えます。
以前は格安SIMを運営していた
楽天モバイルが格安SIMのくくりに入れられることがあるのは、以前にドコモ回線とau回線を利用した格安SIMのスマホプランを、同じ楽天モバイルの名前で提供していたことも関係していると推察できます。
以前から楽天ではMNOへの参入を画策してきましたが、その道は決して簡単ではなく、他の通信キャリアから回線を借り受けてのスマホプラン提供を、総務省から認可が下りるまで行っていました。
格安SIMの楽天モバイルも、通信キャリア(MNO)としての楽天モバイルも同じ名前で提供されているため、古くから情報を提供しているwebサイトでは、認可を受けた後も格安SIMのくくりで掲載されているケースがあります。
これは楽天モバイルだけでなく、以前は格安SIMとして運営されていたことがあるUQモバイルやワイモバイルも、現在は歴とした通信キャリア(MNO)が提供しているスマホプランであるにも関わらず、格安SIMとして扱われているケースがあります。
楽天モバイルのウィークポイントは?
楽天モバイルの「最強プラン」は先に挙げた価格メリットの他にも、オプション料金不要で海外で2GBを利用できますし、他社では制限されることがあるテザリング利用も無制限になっているなどのアドバンテージがあり、スマホプランとして積極的におすすめすることができます。特に楽天市場を普段から利用している方には、ポイント倍率が通常から大幅アップするのもメリットです。
筆者は楽天モバイルユーザーですので、楽天モバイルの良いところだけでなく、ウィークポイントについてもユーザー目線で解説します。
屋内では電波の届きにくいケースがある
建物の奥まった場所などで、楽天モバイルの電波が届きにくいケースがあります。
これは、先の認可を受けている周波数帯一覧を見て頂けると、多く利用されている4Gの周波数帯で、他社と比較して認可されている周波数帯が少ないことが一目でわかります。
元々認可を受けた周波数帯は1.7GHz帯のバンド3のみで、この周波数帯の特性として障害物に弱く、遠くまで届きにくいことがあります。遠くまで電波が届き障害物にも強い700MHz帯のバンド28の認可を受けたのはだいぶ後になってからで、楽天モバイルの大部分はバンド3になっていることが現状です。
その対策は?
(出典:HISモバイル)
その対策として有効なのが、2つの通信会社が利用できるデュアルSIMのスマホ利用です。
普段は楽天モバイルで無制限利用をコスパ良くしながら、どうしても楽天モバイルの電波が利用できない場所では、別回線の格安SIMに切り替えて利用します。
楽天モバイルと併用するのにおすすめの格安SIMとしては、「HISモバイル」がおすすめです。
容量 | 料金 |
100MB | 280円 |
1GB | 550円 |
3GB | 770円 |
10GB | 1,340円 |
20GB | 2,090円 |
30GB | 2,970円 |
HISモバイルはドコモ回線を利用している格安SIMなので、楽天モバイルとは使っている電波が全く異なります。あくまで予備なので、たとえば奥まった場所にあるコンビニのレジでスマホ決済に不具合があるときだけの利用ですから、月に100MBがあれば大丈夫なケースが大半です。月額280円で利用することができます。
主に利用する場所で繋がらないなら「ahamo」もおすすめ
(出典:ahamo)
日夜改善が続いている楽天モバイルは、以前に比べて繋がりやすさにおいて問題は大幅に減少しているのは確かです。しかし、主に利用する場所でどうしても繋がりにくいなら、ドコモが提供している「ahamo」もおすすめです。
ahamoはMNOであり、格安SIMではありません。月に30GBの容量プランがahamoの基本で、月額料金2,970円の中には1通話5分までの国内通話を何回しても無料の「かけ放題」が含まれています。
容量 | 30GB | 110GB |
基本月額 | 2,970円 | 4,950円 |
月に20GBから30GB未満を利用するユーザーの場合、楽天モバイルよりも安くなります。
3GBを若干超過するユーザーのコスパ
(出典:IIJmio)
楽天モバイルの「最強プラン」は、利用したギガ容量に応じて料金が変わる従量制プランです。そのため、容量のしきい値を少し超えるだけのユーザーは、必ずしもコスパは良くなくなります。
たとえば、楽天モバイルで毎月3GBを少々超過する5GB未満程度のユーザーの料金は、割高とも言える2,178円になります。
そんなユーザーは、より細かい容量プランの設定がある格安SIMの「IIJmio」がおすすめです。格安SIMでは珍しく、2人以上の家族で利用する場合に、月額100円の「家族割」が適用されます。(*楽天モバイルでも月額110円の家族割があります)
容量 | 料金 | 2回線以上 家族割 |
2GB | 850円 | 750円 |
5GB | 950円 | 850円 |
10GB | 1,400円 | 1,300円 |
15GB | 1,800円 | 1,700円 |
25GB | 2,000円 | 1,900円 |
35GB | 2,400円 | 2,300円 |
45GB | 3,300円 | 3,200円 |
55GB | 3,900円 | 3,800円 |
5GB未満程度のユーザーが家族で利用すれば、月額850円で支払い費用が納まります。